【ピロリ菌検査&治療】
Helicobacter Pylori
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もしピロリ菌に感染している場合には、上述のように胃がんや胃潰瘍・十二指腸潰瘍を発症するリスクが高くなる危険性があります。
また、ピロリ菌の診療や治療はきめ細やかさがとても大切です。
ピロリ菌感染に心当たりのある方や、このきめ細やかな診療や治療をご希望の方は、一度当院にてお気軽にご相談下さい。
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ピロリ菌に感染しているかはどうやって判断するの? 検査方法は?
ピロリ菌感染の検査方法は大きく2つに分かれます。
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内視鏡を使う検査
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内視鏡所見、生検法、迅速ウレアーゼ試験、培養、胃液PCR など
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内視鏡を使わない検査
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尿素呼気試験(UBT)、便中抗原、血清/尿抗体
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当院ではまず内視鏡検査を行いピロリ菌の有無を予測します。
より詳しいお話をすると、ピロリ菌が現感染しているのか過去の感染なのか、ピロリ菌に暴露されたことのない胃なのか、といったところまで予測を立てます。
その上で検査必要と判断した際には胃液を用いたPCR検査を実施します。
(状況によっては他の方法で検査します。)
ピロリ菌がいれば除菌治療(ピロリ菌をやっつける治療)を行いますので、その後ピロリ菌が消えたかどうかの治療効果判定を便検査(便中抗原検査)で確認をします。
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\ピロリ菌検査の中で最も正確/
PCR検査について
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【ピロリ菌PCR検査の登場】
2022年11月1日、ピロリ菌感染の有無を診断する新しい検査としてPCR検査が保険適用となりました。
ピロリ菌検査としては最先端の検査方法であり、最も正確な検査です。
以下にあげるメリットもあるため、当院ではPCR検査を基本としております。
ピロリ菌がいれば除菌治療(ピロリ菌をやっつける治療)を行いますので、その後ピロリ菌が消えたかどうかの治療効果判定については便検査(便中抗原検査)で確認をします。
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【PCR検査のメリット】
①ピロリ菌検査の中で最も正確!(やっぱり医療は正確性が大切!)
②ピロリ菌の一次除菌治療に使用する抗生剤(クラリスロマイシン)の感受性がわかる!(ココがポイント)
精度が高く、除菌薬の効きやすさ、効きにくさが事前に判断できる新しい検査方法です。
一次除菌薬が効きにくいとわかれば、最初から二次除菌薬を使用することができます。(無駄が無い!)
適正な除菌療法を選択することで、除菌成功率の向上や、治療期間・通院期間の短縮につながり、また副作用の回避にもつながると考えられます。
【PCR検査の方法】
この検査は、必ず胃カメラ検査とセットで行うものになります。
胃カメラ検査中に胃液を回収し、それをピロリ菌PCR検査に使用します。注)除菌後の効果判定にはPCR検査は使用できません。感度が高く、死菌を検出する可能性があります。除菌後のピロリ菌感染の有無は、当院では便中抗原検査で判定しております。一年後の内視鏡検査でPCR検査をするの場合は大丈夫です。
【検査費用】
PCR検査代は、3割負担で約1,530円、2割負担で1,120円、1割負担で約510円です。
(別途診察料と胃カメラの費用がかかります)
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ピロリ菌はどうやってやっつけるの? 治療方法は?
ピロリ菌に感染していることが確認出来た場合には、ピロリ菌を除菌する治療を行います。ピロリ菌の除菌には以下の薬を朝夕2回で7日間服用します。
①P-CAB(カリウムイオン競合型酸ブロッカー):強力に胃酸を抑える薬
②2種類の抗生物質
基本はこの①②ですが、当院ではこれに加えて★を使い、☆をお願いしています。
実はこの★と☆がポイントなんです!
★ビオフェルミンR
これは二つの目的で使用します。
メインの目的は抗生剤により腸内環境が荒れてしまうことをできるだけ予防する目的で使用します。耐性乳酸菌といって、抗生剤に負けない乳酸菌を補充します。
除菌治療をすると腸内環境悪化に伴う胃腸のトラブル(悪心・食思不振・下痢・便秘・腹痛)や体調不良(携帯感・微熱など)・肌荒れ等のトラブルが起こりえます。
ビオフェルミンRを併用することで腸内環境を守ります。
もうひとつの目的はサブ的なものですが、除菌効率が上昇するという報告もあります。
少しでも除菌効果をあげたいので使わない手はないですよね。
☆食事指導
酒・タバコは1週間やめる。
刺激物は採りすぎないようにする。
暴飲暴食はしない。この工夫で全然成果が違ってきます。
なぜこれが必要なのか?
①胃酸を抑える薬を使用してますよね。
理由は抗生剤を飲むときに胃酸を押さえておいた方が除菌の効率が上がるからです。
実際ピロリ菌の治療は従来から②の2種類の抗生物質はかわっておらず、①の胃酸を抑える薬だけ新しくなっています。現存する制酸薬の中で最強のP-CAB(商品名:タケキャブ、一般名:ボノプラザン)を使用します。
とにかく胃酸を増やさないということが大事であり、☆食事指導をしっかり行っています。
これで除菌治療をし、ほとんどの方が除菌に成功しております。一度目の除菌(一次除菌)で上手くピロリ菌を除菌できなかった場合には、服用する薬を変更して二度目の除菌(二次除菌)を行います。
それでも消えなければ3次除菌を行うこともありますが、こちらは自費になります。
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ピロリ菌除菌後効果判定
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除菌後の効果判定は便中抗原検査で
ピロリ菌の除菌治療を行った後は、本当に菌が消えたかどうかを確認することが大切です。当院では、便中抗原検査を基本として効果判定を行っています。
抗菌薬終了から4週間以上経過してから行います。
PPIやP-CABといった胃薬は2~4週間休薬してから検査します。(この期間はH2ブロッカーなどで代替可能です。) -
結果の解釈と今後のフォロー
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陰性:除菌成功と判断! (ただし、胃がんリスクのある方は定期的な内視鏡フォローが必要)
- さらに当院では、除菌成功が確認できた方にも1年後に内視鏡検査を行い、発赤やむくみなど炎症所見が改善しているかを確認しています。
これは胃の粘膜の回復状態を直接観察し、100%除菌成功を確認するためです。
1年前に浮腫や粘液で隠れていた早期病変の発見につながることもまれではありません。 -
陽性:再び除菌治療(二次除菌)を検討します。
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再感染ってあるの?
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特殊ケースを除けば再感染はほぼありません。
特殊ケースってどんなケース?
- ・発展途上国で毎日汚染された水を飲んでいる。
- ・毎日井戸水を飲んでいる
- ・ピロリ菌に感染した患者の胃の中を胃カメラで観察した後に、十分にカメラを洗浄せずに他の人の胃を観察した。(今では考えられないことですが、昔は洗浄不十分の状態で検査が行われていました。)
- 当院では OLYMPUS 社製の高水準自動洗浄機器でガイドラインに沿った**高水準消毒(HLD)**を徹底しています。
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特殊ケースを除けばどうして再感染が起こらない?
上述のように、ピロリ菌は幼少期の未成熟な胃には定着することができますが、成人の成熟した胃には定着することができないからです。
「再感染と言われた!」の多くは、実は検査の読み違い
パターンA:本当は除菌できていないのに「成功」と誤解
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●除菌後効果判定のエラー
- ・除菌後から十分に期間を開けないで効果判定の検査をしてしまった
- ・効果判定の検査前に (PPIやP-CAB)を服用してしまっていた
パターンB:除菌は成功しているのに「まだいる」と誤解
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血清抗体価はゆっくり下がるため、除菌直後の測定は判定に不適切
(抗体は数か月~年単位で陽性のままのことがあり、除菌判定には使用しません)
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無駄に除菌治療をしてしまうということは絶対に避け無ければなりません。ピロリ菌がいないのに除菌治療をするということは、7日間の2種類の抗生剤により「腸内環境を乱すだけ乱して何にも得がない」という悲惨な自体を招いてしまうことになるからです。)
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除菌して間もない頃に血液検査でピロリ菌の抗体価を調べたところ数値が高く、ピロリ菌がまだいると言われました。どうしてですか?
抗体価というものは時間をかけて低下していきます。除菌してまもない頃に測っても意味はありませんし、除菌後の効果判定には用いるものではないんですね。
かなり昔に除菌成功したはずなのに健診・検診やドック等の血液検査で抗体価が高く、ピロリ菌陽性と言われました。どうしてですか?
血液検査のヘリコバクターピロリ抗体は3U/ml以上で陽性となります。
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抗体はピロリ菌そのものではなく体の反応をみてますので、3U/ml以上で陰性の場合もありますし、逆に3U/ml未満でもピロリ陽性の場合はあります。
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