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『消化器内科専門医が解説』【ピロリ菌感染】について

【ピロリ菌感染】
Helicobacter Pylori

わたしはピロリ菌に感染しているのかしら?

ピロリ菌ってなに?

 

  • 下記に該当する場合はピロリ菌に感染している可能性があります。

    ・上下水道が今ほどには整備されていない環境で幼少期を過ごした
    昭和生まれ、発展途上国で幼少期を過ごした、など)

    井戸水を飲んでいた。

    血縁家族にピロリ菌感染者がいる
    (離乳期などに口移しで食事を与えてもらったりするとリスクになります。)
    (ご兄弟がピロリ菌をお持ちであった場合は、幼少期の環境が同じであることから可能性があります。)

    胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍と診断された家族がいる
    ご家族がピロリ菌をお持ちであった場合は、上述の理由から可能性があります。)

    ・ピロリ菌の除菌治療を過去に行った経験がある
    (除菌後にピロリ菌が消えたかどうかの判定をした覚えがない方は要注意です。)


    上記に該当することはありませんか?

     

    ピロリ菌ってなに?


    ピロリ菌(Helicobacter pylori)は胃の中に定着する(長期的に住みつく)ことができる細菌です。
    ピロリ菌は、その形からヘリコバクター・ピロリと名付けられました。ヘリコとはヘリコプターのヘリコ(螺旋状という意味)です。
    成人の成熟しきった胃には住み着くことができませんが、幼少期の未成熟な胃に入ると定着することができます。

    つまり感染はほぼ幼少期に成立しています。大人になってからの感染はほぼありません。(特に先進国)

    ピロリ菌は胃がんの原因微生物(IARCグループ1:発がん性あり)に分類され、胃MALTリンパ腫などとも関連します。

     

  • ピロリ菌が関与する病気について

    • ピロリ菌に感染するとどうなるのでしょうか?

      ピロリ菌が胃に住みつくと、長い時間をかけて慢性的な炎症(萎縮性胃炎)がを起こすことで、さまざまな病気の原因になることが知られています。ここでは、代表的な病気をご紹介します。

  • 1. 慢性胃炎

    ピロリ菌に感染すると、胃の粘膜に持続的な炎症が起こります。長期にわたる炎症は、萎縮性胃炎腸上皮化生へと進行し、さらに胃がんのリスクへとつながることがあります。

    2. 消化性潰瘍(胃潰瘍・十二指腸潰瘍)

    胃酸と炎症の影響で胃粘膜の防御機能が弱まり、潰瘍ができやすくなります。再発を繰り返す潰瘍の多くは、ピロリ菌感染が関係しています。

    3. 胃がん

    世界保健機関(WHO)の関連機関は、ピロリ菌を**「明らかな発がん因子」**としています。

    「慢性胃炎 → 萎縮性胃炎 → 腸上皮化生 → 異形成 → 胃がん」という流れの中で、ピロリ菌が大きな役割を果たしています。

    4. 胃MALTリンパ腫

    胃の粘膜にあるリンパ組織から発生する特殊なリンパ腫の一部は、ピロリ菌の除菌治療だけで改善することがあります。これはピロリ菌が病気の発症に直接かかわっていることを示しています。

    5. ピロリ菌関連ディスペプシア(HpD)

    ピロリ菌に感染していると、「食後の膨満感」「少し食べただけで満腹になる」といった胃の不快症状を感じる方がいます。これをH. pylori関連ディスペプシアと呼び、除菌によって症状が改善することがあります。

    要点整理

    ピロリ菌は「胃の炎症」だけでなく、潰瘍や胃がんといった重大な病気の原因にもなり得ます。感染が確認された場合、除菌治療が強く推奨されるのはこのためです。

    早めに検査・治療を受けることで、将来の病気のリスクを減らすことができます。

    • ピロリ菌に感染している場合、どういった症状が出るの?

感染しても多くの方は無症状ですが、一部では「みぞおちの痛み」「食後のお腹のはり」「胃もたれ」「早期に満腹になる」などの不調が現れることがあります。これらは機能性ディスペプシア(FD)に似た症状ですが、ピロリ除菌で長期的に改善する場合はH. pylori関連ディスペプシア(HpD)と呼ばれ、機能性ディスペプシア(FD)とは区別されています。

さらに、感染が続くと胃潰瘍や十二指腸潰瘍、そして胃がんのリスクが高まることも知られています。

  • ピロリ菌と胃酸分泌の「二相性」

  • ピロリ菌の影響は一様ではなく、感染部位や進行度によって胃酸の分泌が強くなる時期と、弱くなる時期があります。これを「二相性」と呼びます。

    初期:酸が強くなるタイプ(前庭部優位型)

    感染初期には、ピロリ菌は胃の出口付近(前庭部)で炎症を起こします。

    この時期には胃酸が過剰に分泌され、十二指腸潰瘍ができやすくなります。

    症状としては、空腹時や夜間にみぞおちの痛みや灼熱感が出やすくなります。

    これは機能性ディスペプシアの一つのタイプである心窩部痛症候群(EPS型)に似た症状を呈し、
    H. pylori関連ディスペプシア(HpD)と呼ばれ、厳密には機能性ディスペプシアと区別をします。

    機能性ディスペプシアについてはこちらから

    進行:酸が弱くなるタイプ(体部優位型)

    感染が長引くと、炎症は胃の中央から上部(胃体部)にも広がり、酸を出す細胞が障害されます。

    その結果、胃酸分泌は低下(低酸の状態)し、胃潰瘍や萎縮性胃炎、さらには胃がんのリスクが高まります。

    低酸の状態と「お腹のはり」の関係

    酸が少ない方が楽になりそうに思われるかもしれません。

    しかし実際には、低酸環境下では以下のような問題が重なり、かえって膨満感や早期飽満(少量で満腹になる)が出やすくなります。

    • 胃のふくらみがうまくいかない(胃の適応性弛緩の低下)
    • 食べ物を送り出す力が落ちる(胃排出の遅延)
    • 粘膜の神経が敏感になる(内臓知覚過敏)

    こうした変化が組み合わさることで、食後膨満感症候群(PDS型)という、機能性ディスペプシアのもう一つのタイプに似た症状が似た症状が現れ、これはH. pylori関連ディスペプシア(HpD)と呼ばれ、厳密には機能性ディスペプシアと区別をします。

    機能性ディスペプシアについてはこちらから
    また、ピロリ菌がいることによる胃酸分泌の低下は腸内環境にも影響を与えます。

  • 胃酸バリアが弱まり、食べ物に含まれる雑菌を殺菌しにくくなる → 腸内環境の乱れ
  • 低酸は小腸内細菌異常増殖(SIBO)の素地にもなり得る
      • ウイルスや細菌の増殖を抑えたり殺菌する能力が低下しますので、感染性腸炎にかかりやすかったり、無駄な細菌が増殖し、腸内環境が悪化しやすくなったりします。このことから異常なガスの発生による腹部膨満感や便秘・下痢になどの症状にもつながっていく可能性があります。SIBO(小腸内細菌異常増殖)という小腸内に存在する細菌が過剰に増殖してしまう疾患が最近知られるようになりましたが、ピロリ菌の存在もこの原因のひとつになりうるようです。

        SIBO;過剰に増殖した細菌と食べ物による過剰な発酵からおなかが張って苦しい・下痢、便秘といった過敏性腸症候群に特徴的な症状を引き起こす。

    • 要点整理
    • ピロリ菌感染は、初期には酸を増やし(EPS型の症状)、進行すると酸を減らし(PDS型の症状)という「二相性」の変化を示します。
      • その結果、胃の不調(痛み・膨満感)から潰瘍・胃がんに至るリスクまで広がります。

     

    除菌治療の意義

    ピロリ菌を除菌すると炎症が収まり、胃の機能(ふくらみや動き)が改善していくケースが多く報告されています。

    研究でも、除菌によってディスペプシア様症状(H. pylori関連ディスペプシア/EPS型・PDS型いずれも)が改善する効果があることが示されています。

    さらに除菌は、潰瘍の再発防止や胃がんの予防にも直結します。
    すでに萎縮が進んだ方ではリスクがゼロにはなりませんが、それでもリスクを減らせることは明らかであり、定期的な内視鏡検査と併用することが大切です。

 

まとめ

  • ピロリ菌感染は無症状のことが多い一方で、潰瘍やがんがなくてもディスペプシア様症状を起こすことがあります。

  • 胃酸分泌は初期には強く(EPS型の症状)、進行すると弱く(PDS型の症状)なる「二相性」を示します。

  • 感染が続くと胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんのリスクが高まります。

  • 除菌治療は症状の改善と同時に、潰瘍・胃がんの予防にも有効です。

 

次回記事のお知らせ

【ピロリ菌検査&治療について】
Helicobacter Pylori

最も確かなピロリ菌の検査と治療方法は?また、除菌後の効果判定とその後について

詳しく解説します!

こちらからお入りください。

 

  • ピロリ菌に感染している可能性がある方は、お気軽にご相談ください

    もしピロリ菌に感染している場合には、上述のように胃がんや胃潰瘍・十二指腸潰瘍を発症するリスクが高くなる危険性があります。

    また、ピロリ菌の診療や治療はきめ細やかさがとても大切です。

    ピロリ菌感染に心当たりのある方や、このきめ細やかな診療や治療をご希望の方は、一度当院にてお気軽にご相談下さい。

                       
                             


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